シラーの戯曲『オルレアンの少女』を原作としたチャイコフスキーの歌劇「オルレアンの少女」はジャンヌ・ダルクを題材にしたオペラです。
先月初めて演奏した曲の中で、また演奏したいと思った曲が数曲あった中の一つが、このオペラの第Ⅰ幕で歌われるアリア「森よ、さらば!」です。
この曲は、私が演奏をすることになって楽譜をいただいた二週間前に初めて聴き、それまでこの曲の存在を知りませんでした。
第一印象は、カッコイイ。難しそう。チャイコフスキーの曲なので、ロシア語で歌っているのかな?
今まで、歌われる機会が少なかった曲のようです。
初めて聞いたときに、私も聴き入ってしまい、二週間後に演奏することになるとは思いもしなかったので、この曲をいただいた時、嬉しかったのです。
この曲は、チャイコフスキー作曲なので、オペラ全体を歌う時には、ロシア語で歌うことが多いのですが、アリアだけ単独で歌う時には、フランス語で歌われることがあり、今回もフランス語での演奏でした。
どうしてか気になったので調べたところ、当時、パリで成功することが作曲家の勲章であった時代、チャイコフスキーもフランスに憧れた作曲家の一人であり、フランスの題材〝ジャンヌ・ダルク〟でもあることから、フランス語出版もされているそうです。
オルレアンの少女のオペラは、15世紀ヨーロッパのイギリスとフランスとの百年戦争で祖国フランスの為に勇敢に闘ったジャンヌ・ダルクの内容です。 ジャンヌは、オルレアン地方に住む羊飼いの娘でしたが、戦火はこの地方にも迫りつつあり、イギリス軍の手に落ちるのは時間の問題でした。
13歳の頃、ジャンヌは〝フランスを救って王太子シャルルを即位させよ〟という神からのお告げを受け、17歳のときフランス祖国の為に戦う決心し進軍します。
第Ⅰ幕で歌われるアリア「森よ、さらば!」は、この神の声を聞いた奇跡の少女ジャンヌ・ダルクが故郷への決別と旅立ちの決意を表している場面の曲です。
■「森よ さらば!」の歌詞の一部■
神のお望みのままに!
私はあなた様の命令にしたがわなければなりません。
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私の花咲く野原よ 私の木立ち深き森よ
お前たちは 私の為ではなく 他の者の為に花咲くだろう
さらば 森よ 泉の澄んだ水よ
私は旅立ち お前たちにもう会うこともない
私はお前たちのもとを去る 永遠に そうだ永遠に。
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ヴェルディの歌劇「ジョヴァンナ・ダルコ」も同じくジャンヌ・ダルクのオペラを書いています。
■百年戦争■
百年戦争は1338年から1453年まで115年にわたって続いたフランス北部のフランドルという地方の領有問題から勃発した戦争です。
フランスは敗戦続きで、既にパリやボルドーもイギリスに奪われていて、フランス領とイギリス領の境界にあった都市オルレアンが没落すれば、フランスは一気に領土を失ってしまうという危機に陥っていました。
この重要な戦いに参戦して勝利を収めた英雄がジャンヌ・ダルクでした。