∮Con l’armonia(コン・ラルモニーア)通信 vol.4

 

 

∮Con l’armonia通信  vol .4♪

  ■パッヘルベルのカノン■

「パッヘルベルのカノン」の曲名を聞いて知らないと思った方でも、きっとメロディを聴けばどこかで聴き覚えがある曲のことと思います。

バロック時代、ドイツの作曲家ヨハン・パッヘルベル,Johann Pachelbel(1653-1706)によって1680年頃に作曲されたカノン形式の作品「パッヘルベルのカノン」は今日広く親しまれています。

原曲は「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」という曲名で、カノンとジーグで一つの曲になっています。 ジーグの方は演奏を聴く機会が少ないのですが、カノンの部分が最も有名で、パッヘルベルの作品のなかで一般的に知られている唯一の作品です。

曲名にもあるように、カノンの曲の後にはジーグの曲が演奏され、3本のヴァイオリンと通奏低音(チェンバロの鍵盤楽器やチェロ、コントラバスなどの弦楽器など)で演奏されます。

ピアノで演奏される機会も多い「カノン」を私もCDの一曲目に収録しましたが、選曲した理由には演奏している時にお客様のリクエストが多かったことも理由の一つでした。

販売されているピアノ譜の編曲も沢山あるので、お気に入りの編曲をみつけて演奏したり、原曲以外の様々な楽器編成でも演奏されているので、自分好みの演奏をみつけて聴く醍醐味も味わえる一曲でもあります。

パッヘルベルはバロック時代の宮廷音楽家であり、教会の有名なオルガン奏者でもあった為、オルガンのための作品を沢山作曲しています。

バッハの先輩でもあり、バッハもパッヘルベルの作品を一生懸命勉強したそうです。

更に、バッハ以外にもパッヘルベルの作品は生前から人気があり師事する弟子も多く、ドイツ中部・南部の多くの作曲家のお手本となっていました。

バロック時代の有名な作曲家はビバルディやバッハ、ヘンデルなどが活躍した時代。この時代はピアノの楽器はまだ存在せず、鍵盤楽器はオルガンやチェンバロなどでしたが、今日私たちのピアノの教材に欠かせないバッハもパッヘルベルの影響を受け作曲されていたことを知ると、パッヘルベルの偉大さを感じます。

“カノン”とは「かえるのうた」の輪唱のように、2つ以上の声部が同じ旋律を演奏し、同じ間隔を保ちながら追いかけっこすることで作りだされるハーモニーのこと。

「パッヘルベルのカノン」のメロディーは3つのバイオリンパートが全く同じ旋律を2小節ずつ遅れて他のパートへ受け継ぎ演奏されています。 通奏低音でも2小節単位でひとつの和音進行をずっと繰り返されて、原曲では8つの和音進行の(D レ- Aラ – Bmシ – F#mファ♯ – Gソ – Dレ – Em/Gミ/ソ – Aラ)が28回繰り返されています。

こうした通奏低音が繰り返される作法は、バロック時代より前のルネッサンス時代、器楽曲などによくみられた形式で、通奏低音が同じ和声を繰り返す間、他の旋律パートでは一つの主題旋律を次々に即興的に変形し演奏する技法が流行っていました。

パッヘルベルのカノンはこのルネッサンス期の音楽様式を踏襲されている作品でもあります。

バロック時代の音楽の特徴の一つに、同時に複数の旋律を演奏してハーモニーを作る技法がありましたが、パッヘルベルのカノンも単純な和声と主題旋律が様々なパターンに変化し、3つのパートが重なりあってできた曲。

 3つのパートを聴き取ることは難しいことですが、通奏低音が絶え間なく続き、旋律は最初から最後までカノンの形式で作られた曲。

通奏低音による一定の安心感の中、旋律が重なり合い徐々に広がる曲想は、喜びを表すとともに厳粛な雰囲気を作りたいお祝いのセレモニーのBGMにもふさわしい曲にもなっています。

面白いことにパッヘルベルのカノンの通奏低音による和音進行は、現代のポップス音楽など様々な曲にも多用されたているそうです。

例えば岡本真夜の「TOMORROW」、ZARDの「負けないで」などの始まりもパッヘルベルのカノンの和音進行で作曲されていたり、山下達郎の「クリスマス・イブ」では、曲の途中で「パッヘルベルのカノン」がそのまま演奏されています。

今から約300年以上も前のバロック時代に作曲された曲と現代のポップス音楽が同じ和音進行を用いられて作曲されているなんて考えたこともありませんでした。

パッヘルベルは1706年52歳で亡くなりました。

生涯のおいて特にオルガン曲、オルガン曲以外にも声楽曲の分野でも多くの作品を書いています。オルガン曲の分野では、コラールの様式を確立し、特にJ.S.バッハにも影響を与えました。ドイツの中部と南部の各地を転々としたことからも歌唱的な南部の音楽様式と対位法などを用いた中部の様式を上手く統合させた作風もパッヘルベルの特徴であるそうです。

弦ののびやかな音色と旋律がとても美しい、原曲の「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」の演奏です。

 

 

 


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